就任二期目のご挨拶(2026年5月8日開催 第78回定時社員総会記念パーティー挨拶 抜粋)
(一社)日本百貨店協会 会長 好本 達也(J.フロント リテイリング株式会社 取締役)

さらなる進化に挑戦する』
作り手の情熱。使い手の感動。贈る人の真心。贈られた人の感謝。
店舗を愛する従業員の奮闘。店舗を愛してくださるお客様の支え。
百貨店は流通業ですが、私たちが動かしてきたのはモノやコトだけでなく、その根っこにある人の思いでした。
時代が変わり、その接点がオフラインからオンラインに移っても長きに渡って思いを紡いできた私たちだから成し遂げられる進化のカタチがあるはずです。
「人の力で心をつなぐ」百貨店の本分を今、新たなステージに。
このたびの定時社員総会において、二期目の会長職に選任いただきました。協会加盟各社への感謝と共に、引き続き百貨店の業態価値向上に向けて、全力で取り組む決意を新たにしております。
昨年はトランプ関税が国際情勢を大きく揺るがす状況を生み出しました。また、年明け以降も、アメリカ・イスラエルのイラン侵攻をきっかけとしたエネルギー問題が物価にも影響し、社会・経済の不確実性がさらに高まっております。
一方、国内情勢に目を向ければ、昨年10月に発足した高市内閣の「責任ある積極財政」の下、賃金上昇を背景に、個人消費も底堅く推移し、日本経済は長く続いたデフレ局面から成長局面へと歩みを進めております。
百貨店業界においては、一昨年まで成長を支えてきた訪日客需要が、昨年は中国による訪日渡航自粛措置等による影響で減速し、年間の全国百貨店売上高も、前年に対して1.5%の減少となりました。しかし、本年に入ってからは、国内顧客の売上を中心に力強さを取り戻しております。
会長就任時に、協会活動のスローガンを「人の思いをつなぐ場として、さらなる進化に挑戦する」と定め、強化事業として「地方百貨店に関する事業」「インバウンド事業」「DX活用事業」の3つを一貫して推進してまいりました。
本年度もこれらの強化事業を徹底的に推し進めてまいります。
第一の「地方百貨店に関する事業」では、"まちづくり事業"において、関係省庁と連携しつつ中心市街地活性化やエリア開発を学ぶ勉強会を推進いたします。また、"交流事業"では昨年に引き続き、本年もファッション産業人材育成機構(IFI)協力のもと、3つの研修を実施いたします。昨年の同研修では、地方百貨店から多くの若手・中堅社員の方にご参加いただき、同じ課題を持つ仲間との新たな繋がりが生まれたことは大きな収穫となりました。
第二の「インバウンド事業」では、本年11月から始まる『免税リファンド方式』への円滑な移行に向け、現場が迷うことなくお客様をお迎えできるよう、関係省庁とも調整を重ね、万全な準備を整えてまいります。併せて、地方への誘客強化や新市場の開拓にも着手し、百貨店の魅力を世界に伝える力を高めてまいります。
第三の「DX活用事業」では、AIを活用した未来の百貨店やデータ分析によるパーソナライズの可能性を"DX勉強会"で研究いたします。
また、"地方百貨店システム研究会"では、地方百貨店を対象に好事例と課題を共有し、コストパフォーマンスを高めた現場に即したシステムを研究し、より具体的なフェーズへと進めてまいります。
上記の強化事業に加え、「百貨店 心に残る接客エピソードアワード」を昨年度初めて実施いたしました。お取引先様を含めた販売員の士気向上策として、加盟百貨店からお客様との接客エピソードを募集したもので、多くの企業にご賛同いただき、数多くの応募を頂戴いたしました。本取り組みは協会活動のスローガンをまさに実践するものであり、どのエピソードも百貨店の本質を映し出したものばかりでございます。当協会HPにおいても、入賞作品を公開しておりますので、ぜひご一読いただき、人生が豊かになるこの瞬間を、皆様にも感じていただけますと幸いです。
私は先日、国立新美術館で開催された「生誕百年 森英恵 ヴァイタル・タイプ」を見学いたしました。そこで感銘を受けた「森英恵さんの言葉」を紹介したいと思います。
『私が初めてニューヨークに滞在した1961年、アメリカでは既製服産業のシステムが出来上がっており、その頂点にあったのが百貨店だった。高級品になるほど上の階で取り扱われるという明快なシステムで、消費者はその時の目的と予算に応じて、向かう先を決められる。私は、その当時の日本製品に対する現地の評価に衝撃を受けた。最上階には、高級品が並ぶ一方で、地下では 「ワンダラー(1ドル)ブラウス」 と呼ばれる日本製品が売られていた。日本のものづくりが正当に評価されていないことに悔しさと憤りを感じた。アメリカの一流のデザイナーと肩を並べる仕事をしようと決意を固めた。』
まだ駆け出しのデザイナーだった森英恵さんが、将来の夢に向かって進みだしたきっかけは、百貨店にあったのです。
また、その会場で、コシノヒロコさんに偶然お会いしました。その時私は、「45年前、初めてヒロコ先生にお会いした時は・・・」と話し始めたのですが、コシノさんの口から出たのは、「私はこんな夢を持っているの。百貨店も協力してちょうだい。」という先を見た言葉でした。
私は、はっと気づきました。百貨店は、もっと未来を見なければならないと・・・。
百貨店は難しい時代に入っていることは間違いありません。しかし、それぞれの店舗がその個性を磨き、将来の夢に向けて進み続けることが何より大切であると感じる一日になりました。
その夢に向けて進むためには、コラボレーション会員の皆様をはじめとする関係先の皆様のお力添えが不可欠であります。今後とも一層のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げ、会長就任二期目にあたってのご挨拶とさせていただきます。
以上