女性活躍推進に向けた取組
2025年11月14日
一般社団法人 日本百貨店協会
経済産業省では小売業界(百貨店、スーパーマーケット、ドラッグストア、コンビニエンスストア等)における女性活躍や男女間賃金格差の現状についてアンケート調査を実施し、「小売業界における女性活躍の実態調査と対応について」を取りまとめました。
これを受け、当協会では、会員店の現状と課題から、百貨店の業態特性を考慮した女性活躍推進の捉え方を再確認した上で、業界団体としての「女性活躍推進に向けた取り組み」を策定いたしました。
1.はじめに
グローバル経済の進展や少子高齢化による労働力不足など経営環境の変化に対応し、企業が競争力を維持するために、ダイバーシティの推進は欠くことのできない要素となっております。
特に性別のダイバーシティを確保することの重要性が高まっており、女性が個性と能力を十分に発揮し活躍できる環境を整えることは、その中心的な課題と言えます。
このような中、政府の「女性の職業生活における活躍推進プロジェクトチーム」が、2024年6月に決定した中間取りまとめにおいて、小売業界を始めとした5つの業界に対して、課題の整理を引き続き深めつつ、男女間賃金格差解消に向けたアクションプランを策定し公表することを要請されました。
(一社)日本百貨店協会では、これを受け、経済産業省商務サービスグループ消費・流通政策課に連携いただきながら本件について検討を続けてまいりましたが、このたび「百貨店業界としての取り組み」を取りまとめ、同省が作成した「小売業界の現状分析とフォローアップ」と併せる形で、百貨店業界のアクションプログラムを策定いたしました。
2.百貨店の業態特性を考慮した女性活躍推進の捉え方
もとより百貨店は、女性が働きやすい職場として一定の評価を得ており、女性の就職先として人気が高い業界ではありますが、今回のアクションプラン策定を契機に業界の現状をダイバーシティの観点から改めて分析し、百貨店の業態特性を考慮した女性活躍推進の捉え方を再確認いたしました。
先ず、百貨店業界における従業員の男女比を雇用形態別に見た場合、正社員においても契約社員・パート社員においても女性の比率が過半数を占めていることから、業界の未来のためには女性の能力を十分に活用し女性活躍を推進することが、業界全体の生産性向上のカギとなります。
また採用面においては、新卒採用・キャリア採用ともに女性が中心となっているため、採用した女性がキャリアアップし活躍する機会を増やすことは、百貨店業界及び会員各社の持続的成長の観点から必須条件と言えます。
さらに、百貨店をご愛顧いただくお客様の大半が女性であることから、戦略上の重要な意思決定において、女性の感性が大切な要素となるとともに、顧客対応及び提供するサービスに女性の視点や価値観を取り入れることが不可欠となります。
並びに、積極的に女性活躍を推進することは、ジェンダー平等の観点から社会的な評価を得ることになり、百貨店の業態価値向上に貢献すると考えます。
以上を踏まえて、今後、より一層、女性活躍推進に向けて取り組むことが必要であり、女性活躍の推進が、業界における男女の賃金格差解消につながるものと理解しております。
3.百貨店における課題 ~ 上位の職位になるほど、女性の比率が低下する傾向
百貨店においては、従業員構成においても採用者数においても女性の比率が過半数を占めているにもかかわらず、男女別役職者比率では、係長職までは男女差は生じていませんが、課長職以上の上位職位になるほど、女性の比率が低下する傾向にあります。
仕事と家庭との両立を考えた場合、一般的に、労働時間、勤務地、責任の重さ等から管理職を敬遠する女性が多いとの見方もありますが、今後、その要因を解明した上で、この課題を克服すべく適切に対処いたします。
また男女問わず、管理職に関心を持つ人材を増やすための意識改革や、仕事と家庭生活との両立を可能とする働き方改革を推進すること、さらに、役職に付かない場合であっても、 スペシャリストとして活躍する機会(=処遇向上)を増やすことは、女性活躍の推進に向けた重要な課題になると認識しております。
4.女性活躍推進に向けた目標と具体的な施策
当協会では、百貨店における女性活躍を推進するため、三つの目標を掲げながら具体的な施策に取り組んでまいります。
■目標1.女性活躍推進の取り組みについての好事例共有、意見交換
- [具体的な施策]
- ⇒女性活躍推進に積極的に取り組む業界内外の事例紹介
(企業の組織風土改革、心理的安全性の向上、生え抜きに限らずキャリア採用の活躍事例等も研究) - ⇒女性活躍企業データベース等できめ細かく数値を公表している事例の紹介
- ⇒会員各社へのヒアリングや意見交換会の実施 など
■目標2.従業員の意識改革
- [具体的な施策]
- ⇒業界内外で活躍する女性役員やスペシャリストとして活躍している女性社員の講演(ロールモデルの提示)
- ⇒若年層に向けた自律的にキャリア形成を考えるための研修
- ⇒管理職に向けたマネジメントスキルを高めるための研修 など
■目標3.多様な働き方の実現
- [具体的な施策]
- ⇒育児・介護休業、短時間勤務等の積極的取得を奨励する企業の取組事例紹介
- ⇒勤務地を限定した多様な正社員制度を導入している企業の取組事例紹介 など
以上